斜長石 (曹長石albite〜灰長石anorthite) 戻る
plagioclase (Na, Ca)(Al, Si)4O8


※深成岩や広域変成岩中の低温型斜長石(曹長石−灰長石系列)には厳密には不混和領域があり,偏光顕微鏡ではわからないが,組成の異なるものがサブミクロンオーダーで平行連晶になっている場合が多い。

三斜晶系 二軸性(+,−)2Vz=78〜90°,2Vx=90〜50°(Al,Siの秩序度・組成により変動)
α=1.529〜1.575 β=1.534〜1.582 γ=1.538〜1.58  γ-α=0.007〜0.014 主に組成により変動。屈折率・干渉色は灰長石成分に富むと大きくなり,灰長石の干渉色は1次の淡黄〜黄色。

色・多色性/
無色。多色性なし。

形態/火山岩中では4角形〜短冊状を基調とする自形の断面がよく見られ,短冊状のものは(0 1 0)面が発達した板状結晶の長く伸びた断面で,特にNaに富むものは(0 1 0)面が著しく発達するため細長く伸びた断面を示す。深成岩類や変成岩類では自形以外に他形のことも多い。
双晶/クロスニコルでわかる。斜長石は三斜晶系のため,アルバイト双晶やペリクリン双晶が多く見られる。同一結晶内にアルバイト双晶とペリクリン双晶が重複することもあり,その場合,粗い格子模様に見えることがある。特にアルバイト双晶は反復双晶として非常によく見られ,アルバイト双晶が見られない斜長石は少ない(端成分に近い玄武岩中の斑晶の灰長石はアルバイト双晶が見られないことがある)。なお,時にカルルスバット双晶も見られ,アルバイト双晶と重複していることがあり,そのカルルスバット双晶の双晶境界は結晶の長手方向の中央付近に見られる。なお,結晶片岩中のものは,微粒子や,数mm以下の斑状変晶をなし,双晶をなさない場合が多い。
へき開/2方向に認められ,(0 0 1)に完全,(0 1 0)に明瞭で,a軸方向から見ると直交に近いこれらの2方向のへき開が認められる(へき開は平行ニコル下で絞りを絞ると見える)。このa軸方向から見た粒子のアルバイト双晶に関する消光角で斜長石のおよその固溶体組成がわかる。
消光角/アルバイト双晶の双晶境界に対し様々で,それは固溶体組成・薄片の結晶方位による。
※a軸方向から見た粒子ではアルバイト双晶の双晶境界に対する消光角(対称消光角)で斜長石のおよその組成が分かる(下図)。






累帯構造/Na・Si⇔Ca・Alの置換でよく認められ,それはクロスニコル下での消光角の違いに表れる。特に火山岩中の斑晶の斜長石は累帯構造が著しく,深成岩や片麻岩中の斜長石もそれほど顕著ではないが累帯構造がよく見られる。一方,結晶片岩中のものには累帯構造はあまり見られない(Caに乏しくNaに富む曹長石が多い)。


産状超苦鉄質岩を除く各種の火成岩中,広域変成岩中によく見られ,地殻の造岩鉱物としては最も多量に存在する。

火成岩では,曹長石成分に富むものはケイ長質岩に多く,灰長石成分に富むものは苦鉄質岩に多い傾向がある。

・自形の形態は,曹長石成分に富むものは(0 1 0)面が発達した平たい板状なので薄片ではその断面がかなり細長く見え,灰長石成分に富むものはころっとして薄片ではあまり伸長していない傾向がある。


火山岩中では長方形〜短冊状を基調とする斑晶がよく見られる。斑晶のものに比べ,石基中の微小なものはNaに富むため(0 1 0)面が著しく発達した板状でその断面はかなり細長く見え,その並びはマグマの流動方向を示していることが多い。

・はんれい岩中のものはやや灰長石成分に富むものが時に数mm以上の粗大な自形〜半自形をなし,輝石類やかんらん石などの小粒を多く包有している場合がある。

・片麻岩では花こう岩と同様にアルバイト双晶・ペリクリン双晶をなすものが他形で多く含まれ,火成岩のものより累帯構造はあまり発達しない。

・灰長石成分に富む斜長石は熱水変質を受けやすく,変質したものは微細なぶどう石や斜灰れん石などの微粒子が結晶内に汚濁したように含まれている。

・結晶片岩中のものはCaに乏しい曹長石が多く,基質に石英と密雑した微粒子で存在する。また,やや変成度の進んだ緑色片岩や角閃石片岩では雲母類や角閃石類などを多く包有する1〜数mmの丸みを帯びた自形〜半自形(斑状変晶)をなし,これも曹長石成分に富み累帯構造は少ない(温度上昇でも灰長石成分は20%程度である)。これらの結晶片岩中の斜長石は双晶をなさない場合が多い。なお,低温でかなり高圧条件の青色片岩では曹長石成分が藍閃石やひすい輝石成分に,灰長石成分がローソン石になる傾向があり,斜長石の出現頻度は少なくなる。



安山岩中の斜長石
Pl:斜長石,Hb:普通角閃石

自形の斜長石の斑晶。クロスニコルで消光角の違いによる累帯構造やアルバイト双晶が顕著である。。




安山岩中の斜長石 (クロスニコル)
Pl:斜長石

石基の斜長石は斑晶の斜長石に比べ微小で,かつ,(0 1 0)面が発達してその断面が細長く伸びた短冊状であり,この形態はNaに富んでいることを示す(斑晶の斜長石よりもNaに富む)。なお,この石基の斜長石の並びはマグマの流動方向を示す。斑晶の斜長石は石基の斜長石よりもCaに富み,それに比べ伸長していない。


閃緑岩中の斜長石

Pl:斜長石,Hb:普通角閃石,Mt:磁鉄鉱

クロスニコルではアルバイト双晶が著しく,それにほぼ直角方向のペリクリン双晶もいくらか見られる。


はんれい岩中の斜長石
Pl:斜長石,Opx:頑火輝石
苦鉄質岩である,はんれい岩中の斜長石はCaに富み上のクロスニコルの画像のようにアルバイト双晶とともに,それに直交するペリクリン双晶が多く見られ,それらがやや格子状に見えている。なお,この頑火輝石ややFeに富み上の平行ニコルの画像のように淡緑・淡赤色の多色性が結晶方位の違いで明瞭である。


変質しかかった斜長石(花こう岩中)

Pl:斜長石,Qz:石英,Kf:アルカリ長石,Hb:普通角閃石,Bt:黒雲母

斜長石のうちでややCaに富むものは熱水変質を受けやすい。特に累帯構造があるとCaに富む部分が優先的に変質して,微細なぶどう石や斜灰れん石などの濁った状態になる(上画像の平行ニコルの中央の斜長石)。このように深成岩の斜長石はそれ自身のマグマから分離した水分などで幾分,変質している傾向がある(自家変質作用)。


角閃石片岩中の斜長石
Pl:斜長石,Hb:普通角閃石,Ep:緑れん石,Gar:アルマンディン,Ms:白雲母,Qz:石英
苦鉄質の結晶片岩(緑色片岩・角閃石片岩)にはNaに富む斜長石がよく含まれ,通常はマトリックスに石英と混ざった微細な粒をなす。そして,変成温度が500℃近くに高まると斜長石は1〜数mmの斑状変晶になる傾向がある。その斑状変晶は肉眼で白い斑点で見え,偏光顕微鏡下ではこのように石英や緑れん石などの微細な包有物が多く,変成作用の温度圧力の履歴や斑状変晶の回転方向を記録している(斑状変晶中の包有物の鉱物組み合わせと周囲のマトリックスの鉱物組み合わせは異なっていることもある)。
なお,このような結晶片岩の斜長石のCa含有率は変成温度が高くてもおおむね灰長石成分として20%程度で,この理由は緑れん石や角閃石が形成される際にCaの多くが消費されるからである(したがって結晶片岩中の斜長石はおおむね曹長石)。そして,アルバイト双晶などの双晶をなすことは多くない。

※一方,低温でかなり高圧条件の青色片岩では曹長石成分が藍閃石やひすい輝石成分に,灰長石成分がローソン石になる傾向があるので斜長石の出現頻度は少なくなる。

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肉眼で見た角閃石片岩中の斑状変晶をなす斜長石(白色粒状)